【学習を舐めるな】「2ヶ月でペラペラ」は本当か?スペイン語学習の現実とは
最近、ネットや本屋で「2ヶ月でペラペラに!」「短期間でスペイン語マスター!」といった広告や書籍をよく見かけます。しかし、これらの主張には重大な問題があります。それは「ペラペラの定義が曖昧」であり、「学習者のバックグラウンドを無視している」ことです。
本記事では、なぜ「2ヶ月でペラペラ」という主張が現実的ではないのか、そしてスペイン語習得において何が本当に重要なのかを考察します。
1. 「2ヶ月でペラペラ」の罠:ペラペラの定義は?
「ペラペラになる」という言葉は非常に曖昧です。ある人にとっては旅行先でレストランの注文ができるレベルを指すかもしれませんし、別の人にとってはネイティブ並みに議論できるレベルを意味するかもしれません。
例えば、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)では言語能力を A1(初心者)~C2(熟達者) の6段階に分けています。仮に「ペラペラ」を B2(流暢に会話ができる) と定義するなら、通常、数百時間の学習が必要です。
実際、米国務省の外国語研究所(FSI)が示すスペイン語の習得目安時間は約600~750時間 です(出典:FSI Language Learning Difficulty). 1日5時間勉強しても約4〜5ヶ月かかる計算になります。これを考えれば、2ヶ月でペラペラというのが現実的でないことがわかるでしょう。
2. 2ヶ月でスペイン語を習得する人がいるのはなぜ?
ネット上では「私は2ヶ月でスペイン語を話せるようになった!」といった話を目にすることがあります。しかし、こうした事例には 言語的なバックグラウンド が深く関係しています。
(1) 既に類似言語を話せる場合
スペイン語とポルトガル語、イタリア語、フランス語はラテン語系の言語であり、文法や単語が非常に似ています。そのため、ポルトガル語ネイティブがスペイン語を学ぶ場合、短期間で習得するのは比較的容易 です。
(2) すでに多言語を話せる場合
例えば、すでに英語を話せる日本人なら、英語経由でスペイン語の単語や文法を学ぶことができます。しかし、英語もできない日本人がいきなりスペイン語をゼロから学ぶ場合、2ヶ月で習得するのは現実的ではありません。
(3) 習得の基準が低い場合
「習得した」と言っても、その基準が「簡単な会話ができる」程度なら2ヶ月で可能かもしれません。しかし、それを「ペラペラ」と呼ぶのは誤解を招く表現です。
3. 「短期間で習得」ビジネスの危うさ
短期間で語学を習得できると謳うプログラムは世の中に数多くあります。しかし、こうしたプログラムの多くは言語学習の本質を無視し、マーケティングに重点を置いているのが実情です。
実は、私自身もかつてある語学プログラムについて記事を書いたことがあります。そのプログラムは「スマホだけで語学習得可能!短期間でマスター!」といった宣伝文句を掲げていました。しかし、その主張の根拠を調べると、実際には「単語を暗記するだけ」「機械的なフレーズを覚えるだけ」といった内容で、言語習得に必要な リスニング、スピーキング、ライティングの実践的スキル にはほとんど触れられていませんでした。
私はこのプログラムの問題点を記事で指摘しましたが、その結果、運営側から法的措置を示唆するメッセージが届き、最終的に記事を公開していたサイトがクローズされるという事態になりました。「短期間で習得」ビジネスの世界では、こうした批判を封じ込める動きがあることを実感しました。
4. 一部の天才ができることを、万人に当てはめるのは間違い
たとえ、世の中に 「2ヶ月で新しい言語を習得できる天才」がいたとしても、それがすべての人に当てはまるわけではありません。 それにもかかわらず、「自分ができたからみんなもできるはず」という前提で語学学習を語るのは非常に危険です。
大部分の人は、言語学習には時間がかかる のが普通です。たとえば、スポーツの世界でも、一部の選手は驚異的なスピードで上達しますが、すべての人が同じように上達できるわけではありません。それと同じように、「2ヶ月で習得できた個人の成功例」を全面に押し出し、それを一般化して宣伝するのは誤解を招く行為です。
言語習得はマラソンのようなものであり、一部の短距離ランナーが「100mを10秒で走れるから、みんなもできる」と主張しているようなものです。大多数の人にとっては、地道に学習を続けることが、言語を本当に身につける唯一の道 なのです。
5. まとめ:「学習を舐めるな!」
「2ヶ月でペラペラ!」という広告は、学習者を引きつけるための誇大表現であり、実際の習得には 時間・努力・継続 が必要です。スペイン語を本当に話せるようになりたいなら、「短期間で魔法のように習得できる」という幻想を捨て、地道な学習を積み重ねることが大切です。
また、語学学習をビジネスにする企業の中には、批判を受けることを嫌い、異論を封じ込めようとするところもあります。しかし、語学学習は本質的に 時間のかかるプロセス であり、誇大広告に惑わされず、自分自身で正しい学習方法を見極めることが重要です。
たとえ一部の天才が2ヶ月で習得できたとしても、それをすべての人に適用できるかのように宣伝するのは 学習者を誤解させる行為 です。学習は一歩ずつ、地道に積み重ねていくものです。学習を舐めず、コツコツと頑張りましょう!
参考文献
- U.S. Department of State – FSI Language Learning Difficulty
https://www.state.gov/ - CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)
https://www.coe.int/en/web/common-european-framework-reference-languages
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